Conversation about the kingdom of fire

Ideas NOT worth spreading、お前の悪口、そしてお前の肉親の悪口

天狗、中本、或いはサルミアッキ

 福岡の畏友が上京するらしいとのことで歓待の儀を執り行った。天狗をトレードマークにしているため、以下<TENGU>と呼称する。なお、彼の知人が民俗学で天狗の研究をしていたらしく、どうも天狗は便器を舐めるらしいと聞いたのだが、Web上ではその証跡は確認出来なかった。何処の民間伝承なんだ。或いは<TENGU>自身の変態性欲を指していたのかも知れない。おぞましい話だ。

 

 <TENGU>に会いたいという奇特な方々も居られ、会合があればぜひ参加したいという申し出があった旨を<TENGU>に告げる。"大歓迎デス。拘束具ト猿轡噛マセトイテ下サイ"とのことだったのだが、寧ろ自由闊達なる空気を尊重し、<TENGU>の申し出は無視した。また"昼間カラ酒ヲ飲ミタイ"という反社会的なことをのたまっていたので、寝坊して飲みのスタート時間を遅らせることにより社会に恒久的秩序をもたらした。

 

 そもそも寝坊するまでもなく<TENGU>も私も知性が若干不自由であり、更にランデブー地点を新宿駅と定めた時点で、何というか、その、色々ともうダメだ。手際よく合流出来るはずもなく、地上と地上に見える地下を行ったり来たりしてなかなか巡り合えなかった。巡り合えなかった方が幸せだったかも知れない。中国では天狗は凶兆であるらしい。

 

 ミュージシャンシップや"うま味"についての清談を行いつつ散々飲み食いした後、<TENGU>が中本(凄く辛いラーメンを出すラーメン屋さん)に行きたいと駄々をこねたため、有志の一人が<ホッキョクサンバイ>というマントラを授け、向かう。なお、<ホッキョクサンバイ>とは、「ただでさえ辛い中本のラーメンの中でもエクストリームに辛いラーメン(北極ラーメンと呼ぶ)を通常の三倍辛くして下さい」という意味だ。要するに昔話にある如く、<TENGU>に一泡吹かせようという寸法だ。

 

 <TENGU>の壊れっぷりは見事だった。小声で"イタイ……イタイ……"と呟きながら口まで持ち上げた麺を椀に戻し、躊躇った後また口まで運ぼうし、やはり箸を置く様は涙を誘った。<TENGU>が途中でリタイアし、少し時間を潰すためにコーヒーショップを探していた時、脱水症状からか心労からか<TENGU>が一回り老いて見えるに至っては、どす黒い破壊衝動と、ある種の達成感が湧き上がるのを押しとどめるのが困難だった。

 

 解散した後、帰ろうとしたところ眩暈、腹痛、若干の頭痛に見舞われた。abilletage(Goth系のショップ。カフェスペースがある)で一休みしたのだけど、そこで生まれて初めてサルミアッキを食べた。例の世界一不味いと評判の飴だ。正直、私は受け入れられる味だった。と、言うか、好みの味だった。元々アブサンという香草系のリキュールが好きなのでリコリスやアニスに抵抗がない。その上にちょっとした塩気もあり、つまみとアブサンが一緒に口に入っている感じだ。あまりの不味さに吐き出すくらいのリアクションを期待されていたのかも知れないと思うと、多少の申し訳なさはあるが。

 

 そんなこんなで楽しかったよ。