恐らくは生まれて初めての手術

　よく言われるように、口とは例えば食べる器官であり、愛を語る器官であり、呪いを吐く器官であり、味わうと同時に味わわれる器官である。露出した内臓であり、呼吸器であり、それは歌を歌いすらする。それは一般に舌や唇や歯や口蓋や扁桃腺などから成るらしい。

　手術というものをすることになった。無呼吸症候群とやらのお蔭で扁桃腺をバッサリ切る必要があるらしい。お医者様に診てもらうために口を開けた時点で「あー……これは」などと言われた日には手術同意書にサインせずにはいられない。まさに開口一番というやつだ。

　考えてみれば、睡眠障害気味ではなかったことが生まれてこの方なかったので、手術で人生がどう変わるのか皆目見当もつかない。Lisperみたいに物理的に脳が大きくなり、愛と正義についての最終定理が導き出せるようになるのかも知れないし、風邪でもないのに熱が39度付近まで上がるということ(扁桃炎というらしい)がなくなるのかも知れない。 分からない。

　ちなみに、副作用としてハイトーンの"抜け"はよくなるそうだ。