Conversation about the kingdom of fire

Ideas NOT worth spreading、お前の悪口、そしてお前の肉親の悪口

Adrenaline Junkies and Template Zombies

 畏友が『アドレナリンジャンキー』が良いというので読んでみた。原題は『Adrenaline Junkies and Template Zombies』という。ちょっと変わった趣向の書物で、良いケース、悪いケース、それぞれプロジェクトにありがちなパターンをずらりと並べて86個のショートエッセイ集だ。ああしろこうしろとお説教をする類の書物ではない。前書きを引用する。

 

 冒頭から読むにしろ適当な順番で読むにしろ、これだけは留意しておいてほしい。私たちは、観察したパターンの普遍性を主張するものではない。これらのパターンは、どこにでもあてはまるものではない。各々のパターンは読者の組織に合うかもしれないし、合わないかもしれない。もし読者の認識と合い、以前は直観に過ぎなかったものを、チームと共に表現し、試し、磨くことのできる知見へと変化させる一助になれば幸いである。

 pp.ⅱ-ⅲ

 

 本書は"アドレナリンジャンキー"という章で始まり、"テンプレートゾンビ"という章で終わる。他の章も少しだけ列挙してみよう。例えば"死んだ魚"、例えば"「どうしてミケランジェロになれないんだ?」"、例えば"沈黙は同意とみなされる"……等々。ほとんどGrind Coreの様相だ。ワンイシューで駆け抜けることを執拗に繰り替えす。その殆どが笑える。自嘲の苦い笑いではあるが。

 

 「我は傷口にして短剣」と歌ったのはボードレールだったか。それを思い出す書物だった。数々の炎上プロジェクトで受けた傷は短剣になり得るという、デマルコ先生の救済だ。再帰でもあり得る。ここには"身につかない教訓"というエッセイも収録されている。ZENだ。

 

 佳人がよく引く言葉を思い出す。曰く"仁王様はとても怖い貌をしていらっしゃるが、あれは怒りの相ではなく、こどもを助けるために火に飛び込む決死の母の相である"。それでも<人間>は、カインの仔らは、愚行を繰り返すだろう。

 

 然るに、それに抗する者が、少数であったとしても、確固として存在する。