Conversation about the kingdom of fire

Ideas NOT worth spreading、お前の悪口、そしてお前の肉親の悪口

バクラ、響鬼、高円寺びっくり大道芸

 大学生の頃、変なご縁でフィリピン人のニューハーフさん達(タガログ語では"バクラ"と呼ぶそうだ)が歌い踊るパブでバイトしていたことがある。そこでの思い出は沢山あり、昔Blog等で書いたような気がするが、兎も角。そこは女の人が接客するようなお店から出入り禁止になった人なども集まる混沌とした場所であった。

 

 ある土曜日、午前4時に店仕舞いし、反省会があり、その後バクラさん達と朝まで飲んだり踊ったりして帰ると、所謂スーパーヒーロータイム。何となく惰性で観ていたら、仮面ライダーで涙が溢れ、正座して見入った。

 

 "こども騙し"という言葉があるが、とんでもないことだ。こどもにはコスト意識がない。バクラさんパブのように"2時間4500円でこれだけ楽しめるならいいよな"みたいな物の見方をしない。常に本物の最高を提供する必要がある。仮面ライダーはそれに応えていた。なんという尊さか。

 

 ある大炎上プロジェクト中、運良く休みが取れたので髪を切りに行った。何となく外を見ていたら、魔女やヒーローに扮したこども達が駆けて行く。そこで美容室のスタッフが扉を開け、キャンディを渡した。私が住む商店街の軒先には色とりどりのお菓子が置いてあった。狂気と欺瞞と悪意に塗り潰されたような私の日常とは別の日常がそこには在った。愕然とした。10月31日、ハロウィンだ。

 

 そして。バンド関係の用事で外出すると、そこは"高円寺びっくり大道芸"。

 

 それは国外のパフォーマーも集まる本格的な大道芸の祭典だ。竹馬男や狂気の青ジャージ女、本気で怖い河童など、結構ギリギリなパフォーマーも多数闊歩している。そこで全身銀色の機械人間(un-paさんという方らしい)を見た。幾何学的なダンスをしたかと思えば携帯電話を取り出して卑屈に対応する。そうかと思えば突然棒のようなもので威嚇して来る。

 

 機械人間にずっとついて行くこどもたち。"人間に戻った!"、"今電話中だから失礼だよ"等じゃれついている。賢い。先ほど"結構ギリギリ"と書いたが、そうなのだ。多少"結構ギリギリ"でもこどもたちはそれが善いものかどうか見抜くのだ。逆に言うと、こどもたちも本物のパフォーマーを見るべきだと知っていて、こんなに本格的な催しを運営しているのだ。きっと、多分、恐らく。

 

 そして、きっと。この子たちは大丈夫だ。この街は、或いはその先に在るものも。