Conversation about the kingdom of fire

Ideas NOT worth spreading、お前の悪口、そしてお前の肉親の悪口

狂気、ソーシャルスタイル、即ちドストエフスキー

 お前に許された発言は2つだけだ。まずは"はい"。そして"頑張ります"。以上だ。

 

 ……これはある大炎上プロジェクトでご一緒したエンジニアの方が先輩に言われた言葉だそうだ。ある夏の暑い日、彼と野外喫煙所で話していると、ふと彼が遠くを見やった。"あそこでカブトムシが生きながら蟻に食われてるんで、殺してあげて来ますね"。彼はそう真顔で言ってカブトムシを何度も踵で踏みつけ、潰した。彼なりの慈悲であり、狂気である。

 

 また、その大炎上プロジェクトで後に狂気に陥ったあるエンジニアは、家に帰る代わりにキャバクラに通い詰め、最終的には自席に置いたペットボトルでゴキブリを飼い始めたらしい。そのプロジェクトルームのトイレにはある日"便器以外の場所で吐かないで下さい"と注意書きが貼られた。ただ作業量が多いだけのプロジェクトは炎上プロジェクトとは呼ばない。このように狂気と病魔が瀰漫し始めてからが本番である。

 

 私の先輩がメンバーとして参画していたのだが、その人は自責と憎しみの炎に灼かれ、電車で出勤中、途中下車して帰るなどしてなかなか来てくれなくなったし、後輩はストレスで円形脱毛症になった。このように色々な形の狂気があると、正気というものの定義も疑わしくなってくるが、兎にも角にも正気の人について、"ソーシャルスタイル理論"というものがあるらしい。

 

 ソーシャルスタイル理論とは"自己主張"の高低、"感情表出"の高低のマトリクスにより表現される。興味深いことが連想されたため、以下にまとめる。

 

ドライビング:行動派。プライドの高いリーダータイプ。

  • 自己主張:高
  • 感情表出:低
  • 望ましい接し方:お願いする。顔を立ててあげる

エクスプレッシブ:感覚派。人懐っこいムードメーカータイプ。

  • 自己主張:高
  • 感情表出:高
  • 望ましい接し方:会話を楽しむ。同じノリで接する

エミアブル:協調派。和を尊ぶ縁の下の力持ちタイプ。

  • 自己主張:低
  • 感情表出:高
  • 望ましい接し方:感謝の気持ちを表す

アナリティカル:思考派。正確さが身上の理論家・技術者タイプ。

  • 自己主張:低
  • 感情表出:低
  • 望ましい接し方:時間を確保して考えて貰う。具体的に話す


 興味深いと上で述べたのは『カラマーゾフの兄弟』にもこの理論はある程度適用出来そうだからだ。"ドライビング"はドミトリ、"エクスプレッシブ"はフョードル、"エミアブル"はアリョーシャ、そして"アナリティカル"はイヴァン。如何だろうか?

 

 そもそもドストエフスキーの小説に出て来る人物に狂人以外がいるのか、と問われると返答に窮するが。シオランも言っていなかったか、"私がドストエフスキーを気に入っているのは、彼が金と病気の話しかしないからだ"、と。

 

追記:畏友からフィードバックがあったので引用する。<人間>、だ。

 

「ソーシャルスタイルの4つの種類に当てはまらないサイコパスというものがある」と力説していた前職の部長が完全にサイコパスで課長の一人は配置転換、私を含めた若手3人も配置転換、退職したのだった