Conversation about the kingdom of fire

Ideas NOT worth spreading、お前の悪口、そしてお前の肉親の悪口

Sound Horizon ZEN

 諸賢はSound Horizonを説明出来るだろうか? "さぁ、歌ってごらん"

 

 先述の"Mad Marketing Massacre Vol.2"で何かしらレヴィナスおじさんへ向けてカチカチとピースがはまるような感覚があったのだけど、それが何かに似ているな、と思ったらSound Horizonだった。そこでSound Horizonのようだ、と形容するにあたり、はて、どうやってSound Horizonを知らない人に知って貰えばよいのやら、と考えたら頭が痛くなった次第である。

 

 Sound HorizonはRevoという人のプロジェクトで、音楽性としては"Progressive Metal" / "Symphonic metal"の形態を採ることが多く、毎回絢爛たる"コンセプトアルバム"を作っている。声質がやや甘く、言葉選びも退廃的なものが多いため、人によっては"Visual系"、或いは"中二病"のように聴こえる場合もあるだろう。なお、現時点(2015/04/19時点)での最新作『Maerchen』アルバムでは楽曲の演奏時間が軒並み8分強という超高濃度の出来となっている。

 

 もう一つ大きな特徴がある。"コンセプトアルバム"の語り手が"信用できない語り手"である事が多く、円環する記述、時系列の錯綜、"シニフィエ"と"シニフィアン"の乱暴な掻き混ぜ、矛盾した記述がげんなりするくらい盛り込まれており、アルバムをリリースするたびに解釈を巡って"聖戦のイベリア"状態まで発展することも珍しくない。さらにそれはアルバム単位を超えてリンクする場合まである。答えがあるから問いがあるのか、或いは問いがあるから答えがあるのか。"物語は頁の外側に"

 

 例えば『Roman』アルバムの"星屑の革紐"は別アルバムの"澪音の世界"を示唆しているし、同様に"硝子の棺で眠る姫君"は随分昔発売された『Elysion』アルバムの起点となる記述がある。"生と死を別つ境界の古井戸"は同アルバム内の"薔薇の塔で眠る姫君"と"青き伯爵の城"を連想させる記述があり、9曲入りのアルバムの5曲目、中央に位置している。更には未だ語られていない物語の一部が挿入されてすらいる。

 

 さて、諸賢、今までの記述の中に一体どれだけの専門用語が出て来ただろうか。そしてそれぞれの専門用語に関して一晩で説明出来るだろうか。愚かな私には出来ない。出来る気がしない。まさに"残念だったねぇ!"だ。ただこれだけは言える気がする。Revo氏は偏執的な克己心の持ち主、そしてリスナー / 読者への無制限の愛と信頼を寄せている。

 

 きっと、竜は火を吹く必要があったから、火を吹けるようになったのよ。